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「嫌です」




にこり。
彼は柔らかく暖かみのある笑顔を浮かべる。
がちり、とヴァンの体が固まった。
レプリカ風情が、と歯の奥を噛み締める。
しかしここで計画を壊すわけにはいかない。平静を装う。




「何故です、導師。この先で超振動を…」


「使ったら壊れる。…そうでしょう、ヴァン。」




ふうわりとした空気はかわらない。
それなのに、口調だけは嫌に冷たい。
どうして、彼がそれを。
計画に加担する者にしか、知らせていないはずなのに。




「どうしてという顔をしていますね。
導師がセフィロトの構造を知っていてはおかしいですか?」




そういう彼はすすすとルークの隣に立つ。
ルークは訳が分からないというような顔をしている。
ヴァンと隣に立つ彼、どちらが正しいことを言っているのかと。
まだ七年目の命、不十分な教育。
どちらが正しいかなど判断できるはずもない。





「ルーク、お前からも言ってくれ。導師は混乱しておられるのだ」


「おやヴァン、あなたは僕を馬鹿にしているのですか。
導師たる者、常に冷静に物事を判断せよと教えられました。
セフィロトはダアトの最重要機密事項、僕一人の意思では開けません」




ルークの腕をしっかりと掴んで、じっとヴァンを見据える。
自分の知るレプリカイオンはこのような少年だったろうか。
自分にとって利用しやすいものであったはずではなかろうか。
不測の事態に思わず唇を噛んで、導師を睨み付ける。




「主席総長はいつから導師を睨み付けていい程の立場になりましたか。
最も…アンタにとっちゃ導師だろうが関係なしに、只の手駒なんだろうけど。」




くすりと彼らしくない笑みを零したと思った途端。
視界から一瞬、ルークと彼が消える。
一瞬で脱出口の前へと跳んだ彼は、導師などではない。




「……シンク……!」


「あたり。ルークは僕と、僕の兄弟がもらってくよ。
アンタなんかに、この焔は勿体ないからね」




そう言ってルークをその片腕に抱え、余った腕を挙げる。
ひゅん、と風を切り、フラスベルクがシンクの腕を掴んだ。
眼下は憎々しげな顔をしたヴァンもとい超眉デルカ。(それで充分だあんなの)
そして漸く追い付いて来た役立たずの同行者共。(こっちはこっちで間抜け面晒してる)
腕には愛しい焔を抱えて、微笑む。




「聖なる焔の光は僕が貰い受ける。
栄光を掴む者、愉快な偽善者集団、ご苦労様。
アンタらの出番はもう終わり、ここで仲良く泥に飲まれなよ!」




人二人をぶら下げて、人では追い付けないほどの速度で飛び去るフラスベルク。
ヴァンも腕を挙げたが、何かが飛んでくる気配はない。
アリエッタまでもが自分を裏切ったのだ。
そう理解した瞬間。
轟音と共に足下が崩れてゆく。
預言通り、アクゼリュスは崩落するのだ。
その契機となるはずの聖なる焔の光なくとも。
こんなところで終わるわけにはいかない。
往生際悪く呟いても、彼を救う者などない。
幕は彼の手駒と疑わなかった者の手によって引かれた。




すべてここで終わるのだ



(いとしい焔、聖なる焔、ようやく手に入れた!)



なんだかちょっと文章にまとまりがないような。
またも書き直し覚悟ですすいません…!
リクエストありがとうございました。
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