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(ダアトでナタリア救出後。PTメンバーレプリカ組が被験者、被験者組がレプリカ設定)







「きゃあぁぁぁあ!!」


耳障りな絶叫が谺する。
栗色の髪を振り乱して逃げ惑う姿は滑稽で、ひどくルークの笑いを誘った。


「ティア!?…ルーク、あなた何をしますの!!」

「別に、不敬な犯罪者に仕置をしただけだ」


何をそんなに騒ぐのか分からない。
偽者とはいえ、一国の王女ともあろうものが罪人を庇い立てするなんて。
その前に、どうして捕まる前にさっさと国に帰らなかったのか甚だ疑問だが。


「あんたの態度が悪いからでしょ!
なによ、アクゼリュス崩壊させたくせに、少しは反省しなさいよね!」

「俺を犯罪者っていうならお前も反省しろよ、アニス・タトリン。
まさか罪の意識さえないのか?大体、アレは自然崩落だって何回言ったら分かる」


びくりとアニスの体が大げさに震える。(こいつはスパイには向かないな、すぐ表に出る)
なるほど、罪の意識だけはあるようだ。
それが行動に繋がらないなら無意味だが。


「ば、バカじゃないの!やっぱレプリカってどっかおかしいんじゃない!!」


虚勢にも似たような言葉が飛び出す。
それがお前の切り札か、アニス?あまりに弱くて笑えるよ。
くつくつと堪え切れなかった笑い声が喉で響く。


「な、なに笑ってんのよ!」

「いや、気付かないのは罪だと思って」


なあ、イオン?
その言葉で、ティア以外全員の視線がイオンに注がれる。


「全くですね」


ひゅっ、と誰かが息を呑んだ。
傍仕えの守護役でさえ見たことのない、色も温度もない笑顔を湛えた導師がそこに居た。
その笑顔のまま、イオンがアニスに近寄る。


「…い…おん、さま?」

「確かに、レプリカはどっかおかしいんでしょうね、アニス。
貴女方を見ていると、つくづくそう思いますよ」

「…何…を……どういう…」

「私たちは被験者ですわ!」


ずい、とナタリアが割って入る。
図々しいのもここまで来ると感心する。


「刷り込みは完璧なようですね、ナタリア。いえ、『レプリカメリル』」

「?!」

「あなたは王女とすり替えられた庶民の子、メリルのレプリカ。
貴女のいう『王族の蒼い血』なんて、一滴も流れてないんですよ。
王族の証もありませんし、今までの功績の記憶も、全て被験者について残された記録を刷り込んだものです」

「…そんな…嘘、…嘘ですわ……」


愕然とした表情でその場に崩れ落ちる。
脆いものだ。
今まで築いてきたものは、全て『被験者の王女ナタリア』が築いてきたもの。
自分には何一つ残されていないと知ってしまったのだから。


「ルーク。これ以上こんな人達と一緒にいても無駄です」

「そうだな。イオン、ちょっと歩くが大丈夫か?」

「ええ。レプリカみたいに軟弱じゃありませんから」


追いかける炎から必死で逃げ回っていたティアがとうとう炎の手に捕まり、絶叫しながら乖離していくのを横目に見て、ルークとイオンはその場を離れた。
現実を突き付けられた元仲間たちはその場を動くことなく、やがて跡形もなく消え去った。





偽者は君だったんだよ




(手にしたのは借り物の毛皮だけ、早く気付けばよかったのに)


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