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※注意※
・キムラスカ、アニス、イオン捏造です
・髭妹&被験者に対して酷いです
・髭妹は原作よりも性格悪いです
・ナタリア親善大使、ルーク見習い設定
・男性陣は空気です(ホントにいるの?)













「いい加減にしていただきましょうか」


冷たい声が、やけに響いた。
キムラスカ王族の特徴を持つ被験者ルーク。
(最も、彼は今まで鮮血のアッシュとして犯してきた犯罪のせいで、既にキムラスカからは切り捨てられている)
その被験者ルーク…アッシュが、弾かれたように声の主の顔を凝視する。

ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディア王女殿下。

『ルーク』の婚約者であり、今回親善大使としてアクゼリュスへの慰問に赴いた王女。
共に良き国を作り上げようと誓い合った大事な婚約者、そのナタリアが、どうして自分を睨み付けているのか!
その愕然とした表情も直ぐに消え去り、憎しみを持つ者特有の奇妙な思考展開。
図々しくも(そう感じるのはアッシュだけだが)ナタリアの傍らに立つレプリカルークを憎々しげに睨み付けた。
びくりと体を震わすルーク、それを優しく慰めるナタリアとイオンを守るように、アニスがアッシュの前に立ち塞がった。
ティアはアニスの行動を見て、声を上げる。


「アニス、そのルークはアッシュのレプリカなのよ。被験者よりも劣化しているの、何をするか分からないわ。
ナタリア様とイオン様も、迂闊に近寄ると危険です!」


本人はイオンとナタリアを守る、良き軍人として振る舞っているつもりなのだろう。
だが、イオンとナタリアが不快そうに顔を歪めたことにも、ルークが悲しそうに眉を下げたことにも全く気付いていない。
イオンとナタリアに伸ばそうとした手を、怒りの表情を浮かべたアニスが振り払った。


「黙りなさい!ダアトの名を汚す重罪人如きが、馴々しくイオン様とナタリア様に近寄らないで!」

「なっ!?」


心外だとばかりに目を見開くティアに、イオンが思わず深いため息を零してしまったのも仕方のないことだろう。
しかも師団長であるはずのアッシュでさえ、ティアの考えに賛同している。
こうなるとダアトの軍人教育はどうなっているのかと疑いたくなる。最高指導者であるイオンでさえも。


「導師イオン……今年度のキムラスカよりの寄付金、期待しない方がよろしくてよ」

「言葉もありません…。」


イオンも頭が痛いだろう。
かたや首席総長の身内だからと甘やかされて増長したただの一般兵。
かたや師団長であるにも関わらず身勝手な行動ばかり取る首席総長の弟子。


全部貴方のせいじゃないですか髭!

一体なにをしやがっていますの髭!

月夜ばかりと思うんじゃねえぞ髭!


三人の心は、未だかつてないほど綺麗にシンクロしていた。完全同位体も真っ青だ。


「ナタリア、目を覚ませ!被験者は、本物のルークは俺だ!」


必死に自分の身柄を証明しようとするアッシュに対し、ナタリアの視線は冷たい。


「黙りなさいと言ったでしょう。たかが軍人の分際で王族の名を騙るなど、不敬にも程がありますわ。」

「何…を……。」

「あなたはもはや王族ではありません。キムラスカは貴方をルークとして扱いませんわ。
…王族がダアトに亡命したなどと、民にどう申せばよろしいんですの」


ひやりとした、冷たい『王族の瞳』を向けられて、思わず背筋を震わせる。
自分の知っているナタリアは、自分にこんな目を向けるような女性ではなかった。
自分がそうさせているとも気付かず、全くいい気なものだとナタリアが嘆息する。


「貴方には記憶があります。ルークしか持ち得ない、確かな記憶が。
それを以て自分こそ被験者ルークだと名乗れば、疑うものはなかったはず。
それをしなかったのです、亡命したと思われても致し方ありませんわ」

「それは!!」

「ルークがいたから、とおっしゃいますの?記憶のないルークと記憶のある貴方。
どちらを信用するかは火を見るより明らかでしょう。
…それとも、貴方の婚約者は被験者を見分ける力さえないとおっしゃるのかしら」

「あ…まさか、……知って…」


アッシュの顔がみるみる蒼褪めていく。
ようやく気付いたのかとナタリアが呆れたように首を横に振る。


「わたくしだけではありませんわ。公爵や叔母様、キムラスカ上層部は皆知っています」


ナタリアの言葉に衝撃を受けたアッシュが、顔に血液を昇らせて叫ぶ。


「ならばなぜあいつを追い出さなかった!あいつはレプリカ、只の劣化品の屑だぞ!」


あまりに傲慢で、レプリカであるルークを見下した物言い。ナタリアが思わず不快そうに眉を寄せてアッシュを見る。


「いい加減になさいませ、アッシュ。レプリカであろうと、彼はわたくしの大切な婚約者。
ルークであることを捨てた貴方が彼を侮辱するなど、到底許されることではありませんわ!」


怒りに満ちた表情を浮かべて自分を睨むナタリアを、絶望で彩られた顔で見つめる。
ルークに寄り添うその姿に、アッシュはとうとう力なく地面に両膝を着けた。
ティアが気遣うようにアッシュに駆け寄ろうとするが、アニスがそれを食い止めた。
巨大化したトクナガがティアに伸し掛かる。


「な、何をするの!」

「罪人を引き渡すに決まってるじゃん。
アンタはキムラスカの第三王位継承者であるルーク様を誘拐した。
その上今まで不敬な態度をとってきたんだよ、当然でしょ!」

「それはルークの態度が悪かったからだわ!それに誘拐の件は事故よ!私のせいでは…」

「アンタのせいじゃない!わざわざ公爵邸まで押し入って…。
…ホントならとっくに死刑になってるところなんだからね!」


アニスがいくら正論を並べ立てても、更に言い募ろうとするティアをいい加減鬱陶しく思ったか、ナタリアが護衛に連れて来た兵に命じてアッシュと一緒に拘束させる。
譜歌や譜術を使えないように、二人して猿轡を噛ませられる姿は少々滑稽だ。


「導師イオン、二人の身柄はキムラスカ・ランバルディアが預からせて頂きますわ」

「ええ。二人の処罰に関してはキムラスカ、マルクト両国に一任します。教団は一切擁護しません」

「ああ、そういえば鮮血のアッシュはタルタロスを襲撃した主犯格でしたわね。
全く、ルークへの不敬といい、カイツール襲撃といい、どこまで罪を重ねるつもりですの」

「目の前に部下の仇がいるというのに黙って見ている上司もいますしね。一体どんな神経してるんでしょうか」

「いずれにせよ、二人は死刑ですわね。ユリアの血筋も二千年でお終いですわ。
…致し方ありませんわね、こんな愚かな子孫では」


テンポよく交わされる会話を頭上で聞いているティアとアッシュが青くなっていく。
さり気なく話題に挙げられたジェイドは、下がってもいない眼鏡を直している。
ルークはちらちらと二人のことを見ているが、都合よく助けを求めるようなティアの視線には気付かないふりをした。


「御機嫌よう、アッシュ。キムラスカはわたくしとルークが支えてゆきますわ。安心して刑に服しなさい」

「ティア、貴女の遺体は兄と一緒に湿原に並べてあげます。よかったですね、死んでからも最愛の兄と一緒ですよ」


去り際に残された上品な笑顔に、アッシュとティアは力なく兵たちに引きずられていく他なかった。




冷たく揺れるは美しき金の微笑み


(罪を自覚した時には、もう既に貴方がたの首は胴体とさよならしているでしょうね)
(もしかしたら死ぬまで気付かないかもしれませんよ)


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